一個前の記事の続き。
転載してきた文章が著作権を有する場合、初めて著作権法上の適法引用(著作権法32条1項)が問題になる。
その要件は
1 公表された著作物であること
2 引用であること
3 公正慣行に合致すること
4 引用の目的上正当な範囲内であること
の4つです。
■1について:公表された著作物であること
インターネット上で普通に見られる著作物は、公表された著作物に当たる事は疑いない。
■2について:引用であること
引用に当たるかの判断基準は、一般に、
(1) 明瞭区別性が認められること
(2) 主従関係性が認められること
といわれます。
明瞭区別というのは、「ここからここまで」が他人の文章の範囲です、とはっきり見てわかるようになっている事。
借りてきた文章だけ枠で囲むとか、段落を変えるとかそういうのです。
主従関係というのは、借りてきた文章と、それ以外の自分で書いた文章との関係が、「自分のがメインで、他人の文章がサブの関係」にあるということ。
借りてきた量や質など総合して判断される所です。
ここは、結構問題になる所なので、具体的事例ごとに判断しないとあんまり詳しくいえない感じです。
「文章全体の量の内の半分以上が他人の文章だったらアウト」とか一概には言えません。ある程度判断の助けにはなりますが。(例えば、元の文章全体の7割が他人の文書で3割オリジナルだったとして、「これだと半分以上他人のだから、オリジナルの文章をだらだら薄めて長くしまくって、文章全体の内容は変わらないけど、比率は3:7にしてやったぜ」という場合に、シンプルに「他人の文章は半分以下になってるからセーフ」とはいわないと思われる)
以上の2点が満たされた場合、初めて「引用」と呼ばれます。
借りてきた文章を、以上2点を満たさない使い方をした場合は「引用」とはいわないのです。
また、先に述べておくと、以降の3・4についての段落は、この「引用と認められる状態になったとしても」、なお満たされなければならない要件となります。
■3について:公正慣行に合致すること
ようは、その業界での慣習に合致してるか、という話。
ただし、その業界ではいつもそうしている、といっても、それが「法的にみて公正と認められる」必要はある。
■4について:引用の目的上正当な範囲内であること
これは、借りてきた文章が、そもそもその対象となった著作物の中で、どれだけの部分を占めていたか、という話です。
300ページのラノベ全部コピペしておきながら、自分のオリジナル文章を1000ページ分付け足してネットにアップした場合であっても、自分の文章がメインになっていると認められれば、「引用にはあたる」のであります。
しかし、そういう場合でも、自分のオリジナル文章にとって必要とはいえない、つまり正当とはいえない範囲まで引用してきてしまうと、引用とはいっても適法ではない、という事になります。
普通に考えれば、引用してきた文章が、引用元の文章のほとんど全部などという場合、正当な範囲とは言えないでしょう。
【備考】
引用するさいに出所(出典)明示する、というのはどこに規定されているか。
これは著作権法48条1項1号にあります。
引用についての32条との関係では、出所明示は上記3の公正慣行の場面で問題とされます。
出所明示を欠けばそれだけで公正慣行に反する違法な引用とする説もありますが、出所明示は公正慣行違反の判断のための一材料に過ぎないとする説もあります。