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JASRAC(ジャスラック)の独占禁止法違反裁判のこと

◆JASRACの独占禁止法違反裁判のこと

 つい先月(4/28)、JASRACの業態が独占禁止法違反かどうかが争われた最高裁の訴訟でJASRAC側が敗訴しましたね。
 本当ならゴールデンウィーク中にでも書くべき話題ですが、遅ればせながら触れてみます。

判決はこちら:http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=85064
全文もあります。長くて読むのが面倒な場合はこの記事を読んでいただければ概ねポイントはおさえられるように書いたつもりですが、色々な意味でJASRACに対して思うところがある方は頑張って読んでみてはいかがでしょうか。中々面白いです。
なお、判決文中の参加人というのがJASRACのことです。判決文の特徴としてJASRACという固有名詞は出て来ないので脳内変換して読みましょう。


 裁判形式的には、JASRACが直接訴えられたわけではなく、行政(公正取引委員会)がJASRACとは異なる音楽著作権管理会社から訴えられた事件です。

 え、JASRACが訴えられて負けたんじゃないの? と思われるかもしれませんが、こういう流れです。

 ① JASRACに独占禁止法違反があるとして行政が処分(排除措置命令)を下す。
    「おたくのやり方問題があるから改善よろしく」って命令したということです。
 ② JASRACが反論して①の処分が取り消された(=独占禁止法違反ではないとする審決が下る)。
 ③ この処分の取消を違法として行政を訴えたのが今回の事件です(審決取消等請求事件)。

 ②において処分を取り消したのは行政なので、行政に対して「おいおい取り消してどうするんだよ」という訴えをしたわけです。JASRACが被告になっていない理由はこういう経過だったからです。

 直接の訴訟当事者たる被告は行政ですが、争点は「JASRACに独占禁止法違反がないとした判断に誤りがあるかどうか」でしたので、本訴訟における行政側敗訴はJASRACの敗訴にも等しいです(実際にはJASRACも行政側に民事訴訟法上の訴訟参加をしていました)。

 では何が独占禁止法違反と問題視しされ、どういう理由で敗訴したのでしょうか?

なお、↑で争点について「JASRACに独占禁止法違反がないとした判断に誤りがあるかどうか」という回りくどい書き方をしているように、厳密には、今回の判決は「独占禁止法違反である」と断定するものではありません。行政による「独占禁止法違反はない」という判断に誤りがあったことを認定するものにすぎません。ですが、違反がないという判断に間違いがあった、という判断をしているので、ほとんど独占禁止法違反があるといったのと同じようなもんだと受け取っておいて基本的に問題ないと思います。はい。



◆何が問題とされたか

 判決文によれば、問題となったのは、「JASRACがほとんど全ての放送事業者との間で包括徴収による利用許諾契約を締結しこれに基づく放送使用料の徴収」をしていたことです。

 より具体的には、JASRACの管理する楽曲全てについて包括的に利用を許諾し、その使用料は放送事業者の事業収入の一定%をいただくものとする、というやり方が問題となりました。

◆どういう理由で敗訴したか

 他の事業者の市場への参入を著しく困難としていると認定されれば違反になります。

 本件の場合、楽曲は代替性があるので、JASRAC一社とだけ包括的な利用許諾契約を結んでしまえば、放送事業者は他の管理事業者とは契約しないのが合理的であるから、他の事業者の市場への新規参入を著しく困難にしている、と判断されました。
 行政の上記②における判断はこの部分を誤っていると認定されたので敗訴になったわけです。

 詳しく見ましょう。

 楽曲は代替性があるというのは(個人的には判決文の中で一番印象に残った言い回しなのですが)、ようするに、JASRACの管理楽曲にはない曲を他の管理事業者が有していても、「どうしてもその曲を使わなくてはいけないという事にならない。他の似たような曲調のものが探し出せる」ということです。
 頑張ってオリジナリティを出そうと努力しているクリエイターに対してちょっと酷い言い方じゃないかと感じたのですが、とにかく、放送事業者の視点で見れば、無理にJASRAC以外の管理曲を使おうとしなくてもかわりはいくらでもあるということでしょう。無理にJASRAC以外の曲を使おうとすると、(すでにJASRACにも使用料を支払っているのに)他の事業者にも使用料を支払わないといけなくなって出費が増える事になるだけ、という判断がされています。

 こうした代替性が前提にあるので、放送事業者が業界で最も多くの楽曲を管理しているJASRACから包括的な許諾を受けて、後は使用料は事業収入から払います、という方式をとられてしまうと、わざわざ他の事業者と契約を結ぶなんて誰がするのか(いやしない(反語))。
 そういうわけです。

 もし使用料の支払い方法が、本件のような包括的な徴収方法ではなく、「実際に何秒使ったかに基づいて算出する」というように個別の契約方式をとっていれば、このような判断はされなかったでしょう。このような形式ならば放送事業者視点で考えて、JASRAC以外とも利用許諾契約を結ぶことは十分にありえるからです。

◆判決後はどうなる?

 今回の訴訟は、「(行政が行った)処分の取消(↑の②の部分)」の取消を求める訴訟(審決取消等請求事件)でした。
 この取消が今回の訴訟によって取り消されることによって、行政の取消処分(②の部分)は「まだなされていない」状態に戻ります。ですので、行政はもう一度「処分の取消」をするかどうかを一から考え直してやり直さなければならなくなります(しつこいですが、②の部分のやり直しということです)。
 今回の場合、「独占禁止法違反はない」と判断された事で取り消されたものを、もう一度違反があるのかどうか考え直す事になります。
 (ちなみに、本件は最高裁判決なので、これ以上蒸し返されることはありません)

 この再判断においては、今回の判決がベースになりますので、判決で触れられなかった特段の事情がないかぎり、前回の判断とは逆の結論になります。つまり、「やっぱり独占禁止法違反だったわ」という判断がされる見込みが非常に強いです。

 音楽の著作権界隈で非常に評判の悪いJASRACですが、これを期により良い業態が模索されれば良いと思います。
 しかしながら、実際には不満が見え隠れしているようで(http://www.itmedia.co.jp/news/articles/1505/21/news059.html)、中々すんなりと改善されるということもなさそうです。
 今後の流れに注目したい所です。
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まとめ

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